清水寺縁起


江北山宝聚院清水寺は、今を去る1180数年余り昔、淳和天皇の天長6年(829)、天下に疫病が大流行すると、わがことのように悲しまれた天皇は、天台宗の総本山比叡山延暦寺の座主であられた慈覚大師に疫病退散の祈願をご下命されました。慈覚大師は、京都東山の清水寺の観音さまにならって、みずから一刀三礼して千手観音一体を刻まれ、武蔵国江戸平河、今の千代田区平河の地に当寺を開いておまつりしたので、さしもの疫病の猛威もたちどころにおさまったといいます。

  千手観音、くわしくは千手千眼観世音菩薩。千本の手と、その掌に千の眼を持ち、世のすべてを見透し、私たちの苦難消除に縦横の威力を振るって下さる、あらたかな佛さまです。  およそ380数年ばかり前の慶長年中、慶円法印が比叡山正覚院の探題豪盛 僧正の協力を得て中興され、徳川家康の入府で江戸城の修築のため馬喰町に移 り、さらに明暦3年(1657)の振袖火事の後、現在地に再興されたのでした。 『江戸名所図会』にも清水寺観世音菩薩として掲出されている当寺は、江戸三十三観音 霊場 めぐり二番札所としても良く知られ、日々益々霊験を発揮しています。

 平成7年より、およそ2年にわたる大普請を行い、平成9年11月30日に 盛大な落慶法要が営まれました。地上2階、地下1階からなる近代的で瀟洒な佇まい に生まれ変わり、一歩中に入ると、都心のざわめきを忘れる穏やかで安らぎに満ち た空気に包み込まれます。
 なお、ご本尊・千手千眼観世音菩薩像は、台東区有形文化財に指定されてい ます。